抜き足・差し足・忍び足

抜き足。
真夜中に近づく黒い影。



差し足。
その影は、するりとドアを潜り抜ける。



忍び足。
そして、女に迫る怪しい影!!!






実家に帰って様変わりした私の生活。



なにしろほら。
『出戻り娘』ですから。
自分の部屋なんてありません。




というわけで、
ママンのお部屋に居候状態の私。
夜寝るときも、もちろんママンと一緒。
ベッドの横に布団を敷いて、親子仲良く眠ってるわけです。




しかし、戦いは一見平穏そうな寝室で起こっている。




熱血刑事風に言うと
「事件は会議室で起こってるんじゃない、寝室で起こってるんだ!!!」

「HじゃないのにHに聴こえるコーナー」みたいな言い回しに
なってしまうが
夜の夜中の丑三つ時。
静かな戦いがここで起こっているのだ。




私のママンは
眠りがめっさくさ浅い。




中学生時代
みんなをドキドキさせた深夜番組のイジリ−岡田さんを見るために
音声をミュートにして居間のテレビのつけた時
その気配でお母さんが起きてきたせいで
結局一度もその番組をみることが出来なかったくらい浅い。




そんなママンと一緒の寝室。
しかも、私の就寝時間が"この時間"である。




私が寝室に入るとき、ママンはもうすでに寝ているのだ。



・・・・・ママンを起こすわけには行かない私は
くの一試験2級のこの忍び足で布団に滑り込まなければならないのである。




今までの勝率は6割。
今のところは、奇跡の勝ち越しである。



しかし今日
ついつい口を滑らせてしまい
私がママンを起こさないように忍び足で寝室に忍び込んでいることが
ママンにばれてしまった。



それを知ったときのママンは一言
「今日は、逃さないよ。」




何をしょっ引くつもりなの?ママン???




満を持して私を捕獲すべく
今日は早めの床に就いたママン。




私はその罠がかけられた死地へ赴く命知らずのくの一。




捕るか、盗られるか・・・・・。




それでは皆さん、おやすみなさい・・・・・。